「丹沢山のシロヤシオ」
NHKテレビの「日本百名山」で「丹沢山」を見たらどうしても登りたくなった。「金時山」ではほとんど終わっていたし群馬の「赤城山」ではまだ早すぎて見つからなかった「シロヤシオツツジ」が、「丹沢の檜洞丸(ひのきぼらまる)では今週末が最後の見ごろでしょう・・・」との情報を見つけた。「西丹沢ビジターセンター」に車を停めて早朝5時半、「つつじ新道」の急斜面を4時間ひたすらヘトヘトになって登って行った。標準よりも1時間余計にかかったのは年齢のせいかな。
花つきがとてもよくて登山道がシロヤシオのトンネルになるのは10年に一回のことらしい。昨年がその当たり年だったそうだけどそれでも雪をかぶったように真っ白に咲き誇る大木をいくつも発見して興奮したよ。はなびらが絹布のような高貴な白色で、下向きに半開きで咲くのがなんとも奥ゆかしくて魅力的だ。これは天皇家の愛子様の「おしるし」になっている。東国ミツバツツジのピンクの花も負けじと咲き競って、「檜洞丸」山頂は花盛りだった・・・。
2年生のYAさんは中間テストでお休みした。3年生のNAさんと1年生のMA君は学校の「体育祭」が長引いたために結局出席できなかったようだ。というわけで、今日は待てど暮らせど出席者ゼロ!私は愛読書の「徳川家康」18巻のうち第17巻をたっぷり読み進めることができたよ。「大坂夏の陣」で豊臣方の敗北が決まり、倉庫に追い詰められた淀君と秀頼親子が火を放ち自害して果てるくだりだ。2人の命をぜひとも救いたかった73歳の「家康」が涙を流して一生の不覚と嘆く場面が克明に画かれて圧巻だった。山岡荘八の描写のすさまじさは驚くほどだ。
昨日の御殿場教室も中間テストのために3年生のTUさんが一人きりだった。英文和訳では「ヨーロッパの言語の話」が難しかった。それは大きく分けて、ロマンス語族(仏語など)・ケルト語族(アイルランドなど)・ゲルマン語族(ドイツ語など)の3つの枝からなり、それぞれが英語に大きな影響を及ぼした、という内容だった。英語の語彙が実に豊富なのはそのせいで、同じものをさすのに複数の単語があってその微妙な差に苦労するよね。我々が「やまとことば」と「漢語」と「英語などの外来語」を使い分けているのと似ているね。
そこでTUさんに「印欧祖語」の話をした。古代の西洋の言語を「インド・ヨーロッパ語族」という分け方がある。大学の古典語の選択になっている「ラテン語」「ギリシャ語」「サンスクリット」の3つだ。インド南部の「ヒンデイー語」(古代はサンスクリット、日本の仏教で使う梵語)が「英語」(古代はラテン語)と文法がそっくりだ、と気づいた人が偉い。18世紀末に植民地インドの法廷に赴任していたイギリス人裁判官だったそうだ。それが「比較言語学」の嚆矢となった。
以来200年「言語学」は発展をしてきたが、1957年の著書「統語構造論」によって米国・MIT教授N・チョムスキー博士が「革命」を起こし、言語学は「サイエンス」になった。人間の大脳には共通の「文法」が生得的に備わっている(遺伝子に組み込まれている)、というのだ。彼はそれを「UG」Universal Grammarと呼んだ。世界の6000の言語を生み出したのは「普遍文法」がすべての人間の大脳にあるおかげだ。私も学生時代以来ずっとその「ブーム」に乗って夢中になった一人。この英語塾の名称も「UG会」しか考えられない。
この4月、画期的な新書本が「集英社」から刊行された。「チョムスキーと言語脳科学」で東京大学大学院の酒井邦嘉教授の研究だ。前頭葉の左脳に「文法」を司る部位と、「語彙」を出し入れする部位が、「脳波」による検査で発見されたのだ。これでチョムスキーの「文法生得説」の仮説が裏付けられたわけだ。世界中でもっと大騒ぎしてもいいのに・・・。TUさん「ぜひ読んでみたいです!」っていうから、次回貸してあげよう。尾上
(追記)ふつうに町中や街路で見かけるツツジも色とりどりで華やかな花だけど、山道を登っていくと頭上を覆うように咲くオレンジ色のヤマツツジ、ピンク色のトウゴクミツバツツジとこのシロヤシオには特別感動する。先週「赤城山」で見たのは「アカヤシオ」、昨年新潟の「平標山」でみたのは「ムラサキヤシオ」だけど、これは「シロヤシオ」でともに透明色の上品な五葉のツツジだ。ヤシオとは漢字で「八汐」と書く。染色の用語で八回染めるという意味らしい。
1610mの山頂からは同じ道を下るのが早道だけどそれではつまらない。3キロ離れた「犬越路」という1110mの峠に縦走して下山した。時間もかかって苦しいけれどこのコースが特に「シロヤシオ」や「ミツバツツジ」がもっとたくさん楽しめるんだ。4つも5つもアップダウンを繰り返して「はしご」や「クサリ」をたよりに狭くて急な崖路を下っていくから危険この上ない。下りにも4時間以上かかってゴールの「用木沢」まで下った時に冷たい沢の水に手と顔を浸してサッパリした気分。









