「世界初の和露辞典」
昨日は沼津の江原公園にある「明治史料館」に行って「愛鷹山」という企画の「トークの会」に参加してきた。登山の話かと思って行ったら大間違い。愛鷹山麓や中腹に点在する40数個の「愛鷹神社」の調査結果と、江戸から明治にかけての山林所有権の変遷の話で私の今の研究テーマにあまり関係なかった。それで終了後一階の図書室に寄ってみた。書棚にはたしかに幕末から明治にかけての珍しい書籍がびっしりと詰まっていた。とりわけ興奮したのは1857年にサンクトペテルブルグで出版された初の「和露辞典」だった。
学芸員の木口さんが書庫から運んできてくれたその古書をこわごわ受け取ると、「数百万もする貴重本なので慎重に取り扱ってください。」といって助手の女性を私の横に座らせたので、ガラケーで写真に収める私は手先をずっと監視されているのであった。著者は「橘耕斉」(たちばなこうさい)という掛川藩出身の人物で幕末、沼津の戸田港で「ディアナ号」の再建が終わって帰国する「プチャーチン提督」の船でロシアに密航し、その後はペテルブルグ大学で日本語を教えていたらしい・・・。
3年生のARさんは前回「神戸大」の英文「騒音公害」を和訳した。Noise is one of the aspects of environmental pollution that certain human beings come to tolerate, but at great cost.「騒音はある特定の人たちなら我慢できるようになるけど、大きな犠牲を払わないといけない公害のすがたの一つです。」では、certain(ある特定の)とcost(犠牲)の訳が難しかった。今日は最初にTOEIC検定の問題を40題やってみたら85%正解だった。outweighの意味が難しくてThe health benefits of long distance running far outweigh the wear and tear on the joints and muscles.「長距離走が健康に与える利点のほうが関節や筋肉の疲労よりもずっと勝っている。」outweighはexcelと同じ他動詞で「〜より優れている」の意味。ちなみにwear and tearはイディオムで「損傷、疲労」の意味。tearは「切り裂く」、wearは「着る」>「使い古す」と変化した。
受験生のINさんは前回、「早稲田大」の「食の被害」を読んだ。ローマ帝国の時代は水道管の鉛のせいで、中世の英国も乳製品を馬鹿にしていたせいで上流階級の人々が短命だったという。何年何十年の後に有害であることが判明する食品が恐ろしい、と警告している。つまり「時限爆弾」time bombsのようなものだという。すこし難しかったかな。今日もまず「センター試験」の第1問(発音、アクセント)、第2問(語彙・語法、語句整序)をやってみた、少し難しい問題で得点が低かった。be capable of -ing(〜できる)やmake oneself heard(相手に声が届く)、be on call(電話にいつでも出られる)などのイディオムをしっかり覚えよう。
1年生のTU君は前回、英作文で「この大学の学生は全員少なくとも二つの外国語を学ばなくてはなりません。」 Every student at this college must learn at least two foreign languages.「少なくとも〜」はnot less than〜ともいうね。no less than〜だと「〜もの多くの」になってしまうよ。notとnoの違いから生まれた差だったでしょ。今日は「仮定法」の(3)で、as if(まるで〜であるかのように)やIf it were not for〜(〜がないとすれば)のような構文をいくつか勉強した。But for the sun, everything would be frozen.「太陽がないとしたら、すべてのものが凍ってしまうだろうに。」前置詞のbutは元来「〜を除いて」の意味なんだ。「太陽がある場合を除いては」ということ。諺のIt never rains but it pours.(降れば必ず土砂降り)も、「大雨になる場合以外は雨が降らない」ということになるね。
3年生のTUさんはセンター試験が直前なのでお休みします、と連絡がきた。一番大事な時だからこそ出席してほしかったなあ。平常心が一番大切で日ごろの勉強のルーティーンを変えてはいけない。直前になると理科・社会が気になるだろうけどそれは暗記項目で、あと一週間ジタバタしても大して変化はない。ところが英数は一日やらない日があるとすぐに成績が下がる。なぜかというと、頭脳をコンピューターに例えれば、「記憶装置」と「演算装置」で出来上がっているからだ。理社は記憶中心、英数は演算中心なんだ。常に油をさして回転させていないとブレーキがかかるよ。よかったはずの思考回路が止まってしまうことがよくある。私の受験時代の失敗からはっきり言えることなんだ。あと4日間は英数の問題をたくさん解くことに専念しよう。迷うことなく頑張ってみよう。 尾上
(追記)160年も前の本にしては厚紙の表紙がついて予想以上にしっかり製本できている。糸綴じではなくてなにか接着剤を使っているから数ページがはがれていた。開いてみると、イロハニホヘトの順にかなりの数の単語が選ばれてそれぞれロシア語の単語に対応させていた。学生時代に勉強したロシア語の文法書に装丁がよく似ている。それはモスクワの出版で2巻とも英語で解説してあったが。
「和魯通言比考」の和名で、明治時代のロシア語はこれで勉強したんじゃないかな。学芸員のお話では、大手町あたりに居住していた沼津藩の家臣・尾崎家から寄贈された大量の絵画や書籍の一部だそうだ。ところどころに鉛筆のメモが書き込んである。 尾崎家は明治になってロシア正教の信者だったそうで、一族にロシア語を学ぶ者がいたのだろう。のちに伝道師になっている。表紙には、後に函館領事に赴任したゴシケービッチの編集だとロシア語で書いてあった。 実に面白い。(つづく)
