「ロシア語劇」
一日おいてまた東京にでかけた。府中市の「東京外語大」で大学祭の最終日に後輩たちがロシア語劇を上演するので応援だ。西武多摩川線を「多磨駅」で下りてカラフルなTUFSマークの正門を入ると右に高層の講義棟、左に「アゴラ・グローバル」という名の多目的ホールが立っている。文科省の補助金で外語大の伝統「語劇」に特化して建設された劇場で音響・照明などがすばらしい。今年も大人気で長い待ち時間の行列だったが、私の英語塾「UG会」出身の矢田安曇さんが席を確保して待っていてくれた。中央アジア研究科の彼女もロシア語専攻でまさに後輩。おまけにオーケストラではトランペットを吹いて私と同じ。外語大の学生は必ず海外留学するシステムで、矢田さんも昨年フィンランドに1年留学体験してきたから5回生と呼ぶらしい。今年の演目は文豪チェホフの「かもめ」で2年生中心にとても熱演していた。作家志望のトレープコフを演じた学生は出色で発声も演技も素晴らしかった。
もう60年も前、外語大では私もロシア語劇に夢中だった。(それが職業になった有名人がいる。テレビで木枯し紋次郎役の中村敦夫と西郷隆盛セゴドン役の鈴木亮平だ)。入学早々上級生から現代劇の「五夜」をやるぞ、と呼び出され役者を仰せつかった。まだロシア語をかじり始めたばかりなのに初体験はけっこう勉強になった。来年はオマエが作れ、と指名され仲間と走り出した。神田の古本屋街に出かけたらトルストイの戯曲「ニヒリスト」に出会った。そうだ!これは前田和人にぴったりだ。教室でいつも宇宙人のような言動の文学青年を思い浮かべた。台本をロシア語のタイプで打つのも初体験。40人の同級生や下級生に呼びかけキャストとスタッフ決定。六本木の「俳優座」に出かけて衣装の貸出を依頼。そして11月の外語祭でめでたく上演!ステージ袖に縦長のスクリーンを出して手作りの字幕を映写した・・・
先週「英字新聞の会」に送ったジャパンタイムズの記事は「南部鉄器」の話。After Shohei Ohtani bump, Iwate ironware maker sees brighter future(大谷翔平のインスタ投稿の後、岩手県の鉄器制作者には明るい未来が見える)のタイトルで、茶釜や鉄瓶の伝統工芸の現状を興味深く語っていた。(bumpとは車のバンパー(bumper衝突の緩衝装置)の「衝撃」の意味から発展して、SNS のインスタに目立つように投稿することだった)。地元花巻東高校出身で人気絶頂のドジャーズの主砲・大谷翔平に球団の色・ブルーの鉄瓶をプレゼントした工房をネットで調べると、南部鉄器の「及富」(おいとみ)は1848年創業というから江戸時代末期からで180年近い伝統を持つ。岩手県花巻市と平泉町の中間に位置する奥州市水沢にあって茶道具などの制作では様々なデザインを世に問うている老舗だった。
12世紀、平泉の豪族・藤原秀衡が京都の鉄器職人を「中尊寺建設」に呼び集めたのが起源で、その後は江戸時代に伊達政宗も京都から職人を呼んで鉄器鋳造の長い歴史が続く。Nambu kettles have long been esteemed even beyond practitioners of tea ceremony for their elegant designs, robust construction and purported health benefits. (南部鉄器は昔からその優雅なデザインや頑強なつくり、健康によいらしい点で茶道家以外にも高く評価されてきた) A layer of lacquer applied to the heated surface helps to prevent rust on the exterior, while the untreated interior softens water and infuses it with nutritional iron said to prevent anemia.(熱した表面に塗った漆の層が外側の錆を防ぐのに役立ち、一方未処理の内部は水をやわらげ、貧血を予防するといわれる鉄分を溶かしこむ)。 尾上
