マスクをした私服の見知らぬ女の子が教室に近づいてくる。Sさんかなあ?そうだった。「髪をきりました!」いつもの制服姿と大違い。女の子は化けるねえ。今日のテーマは「二重否定」。よく理解できていて問題なし。和訳になるともう一歩足りない。The impact of television violence on younger childrenで、どうしても直訳調に「幼い子供たちへのテレビの暴力の影響」とやってしまう。「の」が3回も使われて意味不明になっている。悪い翻訳の典型例だ。このof は「の」ではなくて「が」。「テレビの暴力番組が幼い子供たちに与える影響」と和訳してほしい。impactという名詞を中心に修飾語句でまとめた「名詞構文」はSVOという動詞中心の「文表現」に置き換えないと、意味が正確に伝わらない、ということ。Sさんは、私が以前に3年生に話したのをちゃんと聞いていたようだけど…and government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth. という有名なリンカーンの演説は「人民の人民による人民のための政治・・・」と普通和訳されているよね。これも実におかしい。governmentという名詞を動詞のgovernに戻すと「人民が人民を人民のためになるように統治する形態はこの地上から消してはならない」。つまり、イギリスのような王政ではなくて人民の代表が政治をするのですよ、という意味。このofは「の」ではなくて「を」。私の大学の友人からきた最近のメールによると、翻訳家仲間で文法をよく知らずに誤訳しても気づかないひとが多いそうだ。このアドレス(演説)の直筆のコピーを私はワシントンのリンカーン記念堂の土産売り場で85セントで買った。古めかしい油紙で本物そっくりにできている。こんど見せてあげるね。
2年生は「不定詞の意味上の主語」と「慣用表現」。項目自体は理解しやすいが、実際に英文の中で使われるとさまざまなバリエーションがあって、理解に苦労する。きちっと和訳してはじめて理解度が明らかになるね。,so to speak,(いわば)が文中に埋め込まれていてもそれがどこを修飾するのか判断しない正確な理解にならない。
ここでF君がお母さんと登場。浜松医大に受かった!きのう後期の合格発表。わずか12名の内のひとりだった。ごあいさつにきてくれたのだ。おめでとう。医学の勉強はこれからが大変。「大学院は東大かハーバードをめざそうね!」 尾上
(追記)友人と箱根の「湿生花園」に行った。結婚前の皇太子妃雅子様がご家族で記念旅行したので有名。20日に開園したばかりだが、もうミズバショウが一杯水辺に清楚な白い姿を写していた。例年より10日ほど早い春の訪れだ。同じサトイモ科のザゼンソウも赤紫の個性的な花。カタクリ、ミスミソウ、ショウジョウバカマ、キクザキイチゲも大好きな早春の山の花だ。
