「トラキチラン」
木曜日は早起きして長野県の「八ヶ岳」まで車を飛ばした。山麓の森の中に咲きだしたという情報で、幻の花「トラキチラン」を探しに(会いに)行ったのだ。白い花弁に紅色が美しいこの花の奇妙な名前は、明治時代に栃木県で発見した神山虎吉にちなんで植物学者「牧野富太郎」が命名したものだ。静岡県にはゼロ、山梨県でも富士山麓の一カ所にしかないというほどの絶滅危惧種なんだ。ラン科の特徴は大きなカトレヤやコチョウ蘭のように一見6枚の花びらだけど、実は3枚のガクの中に3枚の花弁がある。そのうちの一枚は「唇弁」といって大きく華やかな色合いのものが多いのは昆虫を寄せつけるためだ。このトラキチランもピンク色の斑入りの筒状の唇弁が特徴だ。緑の葉がないし高さ10センチほどの小さな花で落ち葉や枯れ枝にまぎれて見つけにくいが、それだけに発見した時の感激はひとしおだよ。
「八ヶ岳」2899mは山頂に花々が咲く大好きな山だ。定年退職して山歩きを始めた20年前からなんども登ってきた。最高峰の「赤岳」の山小屋に泊まってウルップソウの咲く「横岳」、コマクサの大群落の「硫黄岳」など8つの山すべて踏破したよ。初めてトラキチランに出会ったのは2年前、別荘地から「阿弥陀岳」へのコースをたどり「御小屋山」2137mに登った時のこと。ピンク色のイブキジャコウソウや高貴なリンネソウに出会えて感激したな。舟山十字路からは周回ルートで谷に降りて登山道を下ってくると逆からきた山梨の花友グループに偶然出会って案内してもらえたのがトラキチラン。山水の細い流れに沿って1本、また1本と見つけては美しい姿をスマホで撮りまくる。真っ白なシャクジョウソウもトリカブトに似たレイジンソウも咲いてるよ、ここはなんという花の桃源郷だ・・・
19日のジャパンタイムズは'Kokuho' rakes in over 10 billion yen at the box office という見出しで、今大ヒット中の日本映画「国宝」が興行収入100億円を超えて、22年ぶりにベスト3に入ったことを報じていた。rakes inはレーキ(掃除の熊手)で「かき集める」の意味だ。About the turbulent life of a kabuki actor, the movie stars Ryo Yoshizawa as the protagonist who dedicates himself to traditional Japanese performing arts. Ryusei Yokohama plays the role of his rival. (1人の歌舞伎役者の波乱に満ちた人生について、この映画は日本の伝統芸能に身をささげた主人公に「吉沢亮」を起用している。「横浜流星」がそのライバルを演じている。)6月6日の公開というので検索したら、その日の本紙に'Kokuho' illuminates the high price of becoming a national treasure (映画「国宝」は人間国宝になることの大きな代償を描いている)と紹介されていた。
Japan's ningen kokuho (living national treasures) are a select group of artisans and performers who are recognized for mastery of their craft. (日本の人間国宝とは、その技能の完成度を評価された工芸家や芸能人の一団)。毎年116人が選ばれて200万円の助成金がもらえるらしい。Shuichi Yoshida's 2018 novel "Kokuho" traces the life of one such individual, an orphan from a yakuza clan adopted into a family of kabuki stars, whose tumultuous journey through the world of classical Japanese theater leads to the top — but at a price. (吉田修一の小説「国宝」(2018年)はそのようなひとりの人物の人生を追跡する。ヤクザ一家の孤児が歌舞伎役者の家庭に養われて、日本の伝統芸能の世界での波乱の人生を経て(しかし多くの対価を払って)最高点に到達するというストーリーだ。今年5月「カンヌ映画祭」で「国宝」は公式上映され、3人の出演者と李相日監督が招かれて絶賛の拍手と歓声に浴したそうだ。 尾上









