女性の脳内バイアスにひとつ、「超えられない女の存在」というものがあるという。
どうやってもダメだ、やっぱりこの人にはかなわない、というような、ある種絶対的な存在。それは母親だったり、親しい友人だったりするけれど、基本的には彼女みたいになりたいと思っていて、でもやっぱり彼女みたいにはなれなくて、ずっとひとりでイライラしたり、めそめそしたりするやつ。ライバルであり良き友であり憎んでも憎んでも殺せない相手だったりする。息子は父親を超えられるのに、娘は一生母親を超えられない。呪縛と言ったら大袈裟かもしれないけど、一人で勝手に囚われ続ける傾向。不思議だと思う。それを否定したいとか肯定したいとか言う訳じゃないんだけど、男女の脳の作りはやっぱり違う。人間はなりたいと思えばなりたい人間になれるとわたしは思う。だけど、彼女は超えられない。脳が勝手にどんどん強くしてっちゃうからだ。
わたしが超えたいと思ってるのは16歳の女の子。制服を着ていて、笑顔がステキ。わたしが欲しい物を全部持っていた。たった16のくせに、わたしは未だに彼女を超えられない。わたしは完璧な彼女にあこがれて、同時に死ぬほど怖かった。会うたびに恐怖で顔が引き攣るぐらい、あの子にあうのが嫌だった。あの子みたいになりたかったのに、あの子みたいになれないからこそ、結局わたしは彼女から必死で逃げて、彼女が手を伸ばすたびにそれを振り払った。いまだに怯えてる あのときの彼女はとても魅力的で、可愛かった 女の子は可愛い あんなふうに、わたしはなれないからこそ、彼女は完璧で、ステキな人だった。
たった16歳。わたしは今年で21。いまだに、彼女を超えられない。