三宅健が日々のあれこれから
時にはゲストを迎え、楽しくお話する30分番組
Every Sat. 22:30〜22:57
【2023年3月25日のラヂオ】
最終回(932回目)
三宅:2023年3月25日(土)22時30分を回りました。今日の「三宅健のラヂオ」は「東京新聞」の月イチ・コラボ企画=【三宅健とめぐるアート。】をお送りいたします。今回は『東京都現代美術館』所蔵、多田美波《周波数 37306505》をお届けします。お手元に3月19日号の東京新聞がある方は紙面を開いていただいて、そうでない方は、お耳をかたむけていただければ、幸いです。
※記事の内容は下記の東京新聞の「Tokyo Web」でもお読みいただけます。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238917?rct=miyakekenⒸ 多田 美波《周波数 37306505》1965
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〈音声ガイド風 BGM♪〉
多田美波という作家は、「彫刻家」というだけには収まらない、優れた技術者であり、創造主でした。
彼女が生み出した造形は、どれもエネルギーに満ちあふれた、力強い作品ばかり。レリーフや壁面彫刻、緞帳、天井光造、シャンデリア・・・美術館だけではなく、多くの建造物に、見ることができます。
時代は、戦後から、日本の経済がようやく復興し始めた頃。美術学校で西洋画を学んだ彼女の情熱は、ほどなくして、鉄やアルミ、プラスチック・・・次々と新しい素材を求め、作品が、その時々の光を反射して、次元を取り込むことに、注がれました。
「周波数」シリーズは、そんな中、生み出されたエネルギーそのもの。やがて彼女の作品は、あらゆる建築と融合し、空間を彩って行くのです。
多田美波の原動力は、建築空間を芸術環境にすることだったといいます。
2014年、89歳でこの世を去るまで、精力的に芸術に取り組んだ、人生でした。
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三宅:東京都現代美術館の主任学芸員、水田有子(みずた ゆうこ)さんに、多田美波《周波数 37306505》について伺いました。
水田さん:多田美波さんという1924年生まれの作家さんの、1965年に制作された彫刻の作品です。ちょうど激動の時代というか、60年安保とかがあって、東京オリンピックがあって、どんどん都市化が進んでいったりとか、1964年にオリンピック、1970年に大阪万博があってっていう、万博にも多田さんも参加されていたんですけども、時代の中でこういう作品も生まれてきているってことなんです。60年代っていうのが、美術にとっても非常に大きい転換点になっていまして、非常に環境にも注目をされてた時代で、私達が単に彫刻という完結したものを観るっていうことだけじゃなくて、映し出される周りの環境ですとか、私達がこの中で動くことによって動きも生まれたりとか、いろんな要素が含まれてるような作品なんです。この作品はアクリル樹脂にアルミニウムを蒸着させたものなんですが、それがこうユニークな鏡面というか、周りの環境を映し出していて、ちょっと歪んでいることによって、私達が普通に鏡を見るのとはまた異なる効果を生み出しているような作品です。
三宅:壁面彫刻のような。
水田さん:そうですね。下の部分は鉄で出来ていて、そこにアクリルに蒸着したアルミニウムの丸い形が6つ付いている作品なんですよね。
三宅:ただの丸ではなくて、いびつな円形ですね。
水田さん:はい。そうですね。
三宅:これは何でこういう、いびつな形をしているんですか。
水田さん:ちょうど1960年代というのは、美術とか彫刻において、非常にいろいろな変革が起こっている時で、多田さんも、この作品を制作するにあたって、いろいろな新しい素材を使った新しい加工の技術を使ってこういう作品を生み出しているんです。その中で、この鏡面というのが、私達が居る周りの環境というのを映し出しているんですよね。単にそのまま映し出しているのではなくて、形がいびつであることによって、普段とはまた違った認識を私達に与えてくれるような、そういうことで歪んだ形になっているかなと思うんですけれども。
三宅:このタイトルが、「周波数 37306505(サンナナサンゼロロクゴウゼロゴウ)」というタイトルなんですけれども、それは何かやっぱり6つの鏡面が歪んでいるということに関係してたりするんですか。
水田さん:そうですね。この周波数というのは波動ということで、私達の環境の中で動いていくというか、それが見る人にも伝わってくるし、周りの環境にも働きかけていくということが込められているかと思うんですけども。
三宅:おもしろいですよね。触ってみたくなっちゃいますよね(笑)。触わっちゃダメなんだけど。
水田さん:(笑)。こちらとの関わりを促してくるような作品でもあるなって思うんですよね。近づいたり離れたりとか、横に動いてみたりとか、それによってどんどん変化していくというのが凄く面白いなと思います。
三宅:ラジオなんで見えない方のために説明しますと、鏡面になっていて、6つの物体があるんです、鋼板の板に。魚眼レンズのように湾曲しているので、世代があれなんですけど(笑)、ビースティーボーイズのミュージックビデオみたいに、近づくと大きくなって自分自身も歪んでいくという、そういう立体物ですね。結構面白いですね。近づくとどんどん自分が歪んだり、真ん中に立ってみると上下映っているし、左は左で、まったく違う角度の自分が見えたり。そして、どこにでも映り込むから結構面白い。
水田さん:やっぱり日常の空間というか、私達が居る空間を映しながらも、それがまた別の姿になって表れてるというのが、すごく興味深いなというか面白いところかなと思います。
三宅:よく出来てますよね、本当に。ちゃんとどこにいても映り込むように計算されて作られてるんだろうな。水銀のような、ターミネーター2の敵のエイリアンみたいな感じみたいにも見えるし、マグマのようにも見えるし。面白いですね。今にも動き出しそう。吸い込まれそうになりますね、ずっと見てると。置かれる場所によって、映し出されるものが変わっていくと思うので、面白いですよね。
水田さん:そうなんですよね。こういうタイプの作品は展示される都度、ある意味では変わっていくというか。
三宅:展示される場所によって、コンセプトが変わっていくというか、コンセプトが動いていくというのが面白いですよね。
水田さん:そうですね。彫刻というとやっぱり動かないもの、固定されたものというイメージがあると思うんですけれども、三宅さんが今おっしゃったように、すごく動的で、そこに広がりを見せるようなところがありますよね。
三宅:なんかこう、飽きないで見てられますね。
水田さん:周りの人が動いてるのもまた面白いし、自分が動いてても面白いし。お子さんとかも楽しんで観ていただいてるかと思います。
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三宅:今日ご紹介した【三宅健とめぐるアート。】の連載内容は、東京新聞の「Tokyo Web」でもお読みいただけます。また、来月4月の【三宅健とめぐるアート。】の連載は、第4週の日曜日4月23日の東京新聞に掲載される予定です。是非チェックしてください。
〜♪ MUSIC 〜
三宅健「分からないだらけ」
三宅:お送りしてきました「三宅健のラヂオ」。2005年4月にスタートしまして、本日が932回目ということでございました。本当にですね、リスナーの皆様に沢山のメール、そして、お葉書を送っていただきまして、本当にありがとうございました。リスナーの皆さんのおかげで、この「三宅健のラヂオ」を18年間続けることが出来ました。一番最初は、毎週月曜日、深夜24時からの30分を楽しみにしてくださっていた皆さん。その頃はまだ、radikoもなかったですから、「車の中で聴いてる!!」とか、「お風呂場の隅っこでアンテナを伸ばして、なんとか聴いてます!!」とか、「ダウンを着て、ベランダで聴いてます!!」とか、いろんな人がいろんな環境で、このラジオをどうにか聴こうとして、聴いてくれてたことがとても懐かしく思います。今はradikoで聴けますから、、、もちろん生放送だと2分遅れぐらいになっちゃうかもしれないんですけど、でもねぇ、文明の利器は凄いですねー。聴けちゃうわけですし、そして、その頃はMDだったり、カセットテープで録音しなきゃいけなかったけど、今はタイムフリーで1週間は聴けたりなんてことも出来ますし、すごく便利な世の中になったと思っております。でも、どんどんデジタル社会になって、いろいろ発展していきますけど、それでもラジオって、やっぱり、他にはないコンテンツだと思うので、リスナーの人と、しゃべる人間との関係性が深く構築できるような、そんなコンテンツなんじゃないかなと思いながら、このラジオをやっておりました。リスナーと僕達だけしか知らない何かっていうのが、繋がってられる何かっていうのがあったことが、とっても嬉しかったです。今まで沢山送ってくれたけど、メールが読まれなかったりとか、お葉書が読まれなくて、「放送証明書」がゲットできませんでしたという方もいるかもしれないんですけど、それは、本当にごめんなさい!!ということで(笑)。何度も何度も採用されて、私は何枚も持ってます!!って方も、、、中にはハガキ職人レベルの方もいらっしゃったと思うんですけど、本当に、皆さん抜きではね、語れないラジオだと思いますので、本当に心から、この「三宅健のラヂオ」を楽しみに愛してくれた皆様に感謝したいと思います。僕も土曜日の夜22時30分になって、なかなかね、月曜日の深夜24時っていうのに、凄く馴染があったんで、みんなも「間違っちゃった!!」とか、僕もradikoの登録が、月曜日じゃないのにアラームが付くんで、「あれ???今日??じゃないな、、、」みたいなこともあったり、皆さんも同じような感じで過ごしていたんじゃないかなと思います。でも、今日で、「三宅健のラヂオ」は終了しますが、終わりは始まりでもあり、新しい何かが待っているわけですから、サヨナラじゃないんじゃないかなと思いますんで、皆様、「寂しい」なんて言わないで、楽しく!!終わりたいと思います。
公式HPにあります「ラヂオの日記」は今月の3月31日まで閲覧できますので、皆様是非、そちらも併せて、お楽しみください。昔のラジオの内容までさかのぼれると思うんで、、、結構、膨大な(笑)数があると思うんで、観る方も大変だと思うんですけど、是非楽しんでいただければと思っております。というわけで、「三宅健のラヂオ」お相手は、三宅、、、