茄子に触れ、偲びたりしや、老婦の手。
年が暮るれば一周忌なれ。
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たった10円で売られてた形の悪い茄子。
金欠に喘ぐ身には有難いので一本買った、その帰り道に雨が降り。
水に触れた瞬間から茄子は萎び始めるから、「今日はまだ火を通さなくても大丈夫よな」と芯の固さを確かめるために軽く握った拍子に。
夏の帰省のときに世話をしていた祖父の肌触りはこんなだったなと思いだし。
何故か、祖母の手を握ったような気にもなった。
年が明ければ、一月の末は祖母の一周忌で時間の流れは早いなあと思う。
そんな想いが駆け巡るにつれ、上記の五七五七七が頭の中をぐるぐる回る。ので外に出した。
老婦と老夫は同じ音。
いやうん、まさか茄子(しかも安物)で泣かされる日が来るとは思わなかったよ。